「風立ちぬ」 投稿者:丸男 投稿日:2013/07/24(Wed) 16:27 No.388
昨夜、プレビ劇場で宮崎駿の「風立ちぬ」を見て来ました。 2号スクリーンでプレビでは2番目に大きなスクリーン。 火曜日の18時20分からの放映ですが、観客は25人。
見終わった直後の感想は、「ん〜〜〜〜、困った、どうしよう」と言うものでした。 あらすじを書いてしまうと、営業妨害になりますので、控えますが、
・日本が誇る名機・ゼロ戦を設計した若きエンジニアの生き様 ・菜穂子との出会い、偶然の再会、恋愛と婚約、別れ
この辺がテーマだったと思いますが、画面の流れや人の表情に抑揚がなく単調で、 と言って哀しみをじっと抑えて堪えると言う表情でもなく、 ピクサーやディズニーならば、主役はもちろん、脇役に至るまで、 目の動きや瞳孔の開き具合、眉間の皺、口元や鼻孔の動き、ほっぺの膨らみ等など、 実にリアルで豊かな表情をするので、見ているこちらに感情が移って来るのですが。 その辺は見る側の感性とイメージ力に委ねたと言うことなんでしょうか?
宮崎駿の映画はそもそも人の表情はプレーンなのが特徴ですが、 それを荒唐無稽、奇想天外、ロマンチック、メルヘンチックな想像・映像の世界へ導いてくれるので 予想外の展開や映像がプレーンさを補って余りあるので、毎年ほぼ欠かさずに見ているのですが、 たとえば、過去の作品・・・魔女宅やナウシカ、トトロ、ラピュタ、ハウル、もののけ、千と千尋、紅・・・ などがそれで、予想外の登場人物やシーンの展開に感性のアンテナが触れっぱなしで、 映画館から出て来た最初の一言は「あ〜、面白かった!」だったのですが。
それと、今回の若き主人公は群馬県藤岡市出身の堀越二郎がモデルとのこと。 中学・高校・東大と全て首席で卒業の超エリートとのことですが、 群馬の田舎町出身なので、田舎出身の苦学生がゼロ戦設計と言う偉業を達成するのかと、 自分勝手に想像していたのですが、 映画の中では、就職当初から期待されていた若きホープで、 しかも戦時中にも関わらず軽井沢に長期避暑に出かけられる身分だったので、 ちょっと予想とずれました。この辺、宮崎駿の創作かも知れませんが。
また戦争の暗い部分の描写も少なかったので、社会派映画と言う感じでもなく、 菜穂子との別れも戦争が切り裂いたのでもないので、切ないラブストーリーと言う訳でもなく、 ただ、女性の観客ならば、後半は菜穂子の姿や決心を自分の身に置き換えて、 涙するシーンはたくさんあったかと思います。
それと、各シーンを切り抜いて静止画で見れば、とても美しくて 特に緑や空、水の流れなどは爽やかで清々しくて、 特にユーミンの主題歌も優しくて綺麗で、映画の後にもずっと頭の中に残っていい気持ちでした。
と、今回は感想を躊躇した映画ですが、 あくまで私の感想なので、実際は皆さんがご自分で見て、感じてください。 私の場合、エンターテイメント性満載のハリウッド映画の見過ぎのせいもあるかも知れません。
Re: 「風立ちぬ」 - 森高ファン 2013/08/09(Fri) 22:17 No.390 「風立ちぬ」を昨日、ムービックスで見て来ました。
まずは、ジブリならではの絵の美しさに感動!しました。 大正〜昭和初期の日本の風景・・・細部にまで味のあるノスタルジックな町の景観、恐らく群馬県藤岡町?の広大な田園風景、お屋敷、庭の風情。 緑の中の眼鏡橋、堀辰雄の「美しい村」をそのまま絵に描いたような軽井沢。 汽車や戦闘機の手の込んだメカの描写に、関東大震災も壮絶でスゴかったですね。 この辺は、人の声を使ったというSE(効果音)とともに、DVDレンタルでは味わえない劇場ならではの醍醐味です!
ストーリーは航空技術者、堀越二郎がゼロ戦を設計し、完成(そして壊滅)させるまでの活躍に、堀辰雄の小説「風立ちぬ」をMIXさせた展開で・・・ それがまた絶妙な組み合わせでさすが、宮崎駿先生です。 二郎と、その妻となる菜穂子の出会い〜別れという哀しく切ないラブストーリー + 若き日の夢やロマンを追った物語なんだと思います。 商業映画として、映画が面白ければ良い。大衆に受け売れれば良いというエンターティ−メント性もありますが、今回の作品は堀辰雄というだけに「純文学」の芸術的なエッセンスも備えている作品と言ってもいいでしょう。
先月、こちらの掲示板で丸男さんがコメントされてましたが、キャラ、特に主人公2人の表情が、確かに淡々としていて乏しいですね。 丸男さんの見終わった直後の感想は、「ん〜〜〜〜、困った、どうしよう」と言うものでしたが・・・ それって、いったい何だろう? というのが私も気になっていたところでしたが、、見終わった後はよくわかりました。
クライマックスが尻切れトンボとまでは言いませんが、予想以上にあっけなく終わって、エンドクレジットの音楽、ユーミンの「ひこうき雲」になってしまったのは意外でした。 もの足りなさというよりは、あたかも儚(はかな)く虹が消えるような終わり方で、それがこの映画そのものを端的に表しているようにも思いました。
大空へ飛び立ってゆく飛行機への夢、憧れ、情熱・・・やがて終戦を迎え二郎の設計したゼロ戦は一機も戻ってはこなかったという喪失感、その散りゆく儚(はかな)さ。 それと同じように、妻の菜穂子も二郎のもとから去り、山の中で寂しく一人逝ってしまう。
みんな風に乗って旅立って、ひこうき雲のように儚く消えていってしまった・・・ でも、菜穂子もゼロ戦たち、隊員たちも短くも美しく燃え、、精一杯、力の限り生きていた〜それだけは確かな証。 菜穂子を失い、絶望、苦悩する二郎の場面はまるでカットされたように皆無で、それだけ、そのつらさの大きさを感じました。
この映画の言わんとしていることを、一言で言い表すのは困難ですが、青春の夢、憧れ、恋人(伴侶)が自分の前から、風とともに過ぎ去り、、 つらくてつらくてどうしようもない。死にたいけれど、それでも、生きてゆく自分がある。 それが「風立ちぬ、いざ生きめやも。」なんじゃないかと思います。
欲言えば、、菜穂子との別れも、原作にあるような「死」を乗り越えたところの「生」が描かれ、もっと堀文学の本質に迫ってゆけたら、さらに深みのある作品になったんじゃないでしょうか。 逆に言えば、、あえてそれは語らないで、納得が行くようにはまとめず、「ん〜〜〜〜、困った、どうしよう」という境地に観客を陥れて、 見た後にじっくり考えてもらおうという作戦なのかもしれませんが。
最期に夢の中で、「君の10年はどうだったかね?」とカプローニさんから問われるシーンがありましたが・・・ 菜穂子が一人で黒川邸を去り、二郎がゼロ戦のテスト飛行に成功した1935年〜終戦の1945年。その空白の10年が欠落していることにこの映画のわからなさもあるように思います。 はたまた、「続・風立ちぬ」でそれは描かれることになるんじゃないかと、思わず予想してしまいました。
でも、続編もなくてもいいか。。どんな尻切れトンボの作品であっても、こんな哀愁とロマンティシズムに溢れた、限りなく美しいアニメ映画は見たことありませんでした。 きっと珠玉の名作になって残ると思います。 私も、夕立の後に現われた虹を見て、菜穂子が「生きてるって、素晴らしいね。」と言ったところから、後半はずっと涙して見ました。 いい映画の紹介、ありがとうございます。^ ^
Re: 「風立ちぬ」 - 丸男 2013/08/11(Sun) 23:17 No.391 森高ファン さん、「風立ちぬ」・・・感動されたようですね。 昨日の昼間、「風立ちぬ」の制作ドキュメントが放映されましたね。 一時間以上の長いドキュメントでした。 宮崎駿は試写会で涙し、自分の映画を見て涙したのは始めてだったようで、 周囲の近しいスタッフも「宮さんも泣くんだ」と驚いていた様子でした。 宮崎駿自身、この映画の製作には相当にたくさんの思い入れがあったらしいです。
|