キンラン、ギンラン 2019 [ ぐんま緑の基金・伊勢崎地区 ] [ Home ]



群馬県伊勢崎市で自生する

キンラン、ギンラン 観察記録 2019

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キンラン、ギンランについて(是非お読みください)

観察会 2019/5/1

掲載日:2019/5/6
 伊勢崎市内某所で咲くキンランとギンラン絶滅危惧種(*1)であることから保護管理下(*2)にあり、5月1日、今年度の現地観察会が行われました。講師は群馬大学社会情報学部 石川真一教授。 参加者は地元区長会と(株)いせさき総合開発の皆さん。
 伊勢崎市におけるキンランの記録は「伊勢崎市史【自然編】」(*3)で紹介され、それによれば、神沢川で1株確認されています。当地で発見後、年々確認数を増やし、昨年2018年にはキンラン、ギンラン共に100株を超え、今年の観察会でも同様の数を確認。今回は生育過程に個体差が大きく、既に満開の株がある一方で、発芽したばかりの株もあり、それらを考慮すると、最終的には昨年を超える株数を確認できる模様
 前年に大きく育った株からは翌年も大きな株が育つ傾向にありますが、絶えたり休眠していると思われる株や新たに発芽した株もあり、三位一体が生育条件(*4)であるキンラン、ギンランの生育条件の難しさを教えてくれます。
 今年の観察会では、キンラン、ギンランのほかにシュンランも観察。過年度までの保護管理作業において、園内各所で育っていたシュンランを一ヶ所に移植し、今年はその成果あってか数十株のシュンランを確認。移植した主な理由は、比較的認知度の高いシュンランの盗掘防止のためで、群馬県ではシュンランも絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。

 生育条件(*4)が揃うことが大前提ながら、過年度の観察を経て、発芽を促進するには覆土が柔らかいこと、発芽を阻害する遮蔽物がないことが重要であることを学びました。具体的には、伐採した樹木を積み上げないこと、木材チップは覆土を柔らかくする効果があるものの、厚過ぎては逆効果となり、せいぜい5cm以下が望ましいこと等です。今回の観察会では、キンラン、ギンランを確認した周辺で、厚さ数十センチのチップが敷かれている場所もあって、薄く敷き均す必要があります。日射条件は覆土条件ほどには敏感ではないようで、日当たりのいい場所や木陰等、様々な場所で生育しています。

 平成27年度から「ぐんま緑の県民基金」の補助金を受け、今年で5年目となるキンラン・ギンラン生息地保護事業。今年も、通年の観察や保護が求められ、特に今年は5月1日時点ではギリギリ発芽した株もあるので、5月中下旬で再度の観察が望まれます。再度観察した折には再びレポートしますが、まずは5月1日時点で確認したキンランギンランの一部をご覧ください。(2019/5/6 記)

(*1)群馬県では絶滅危惧種IB類(2018年部分改訂版)、環境省では絶滅危惧II類(VU)(2019版)と指定。


(*2)波志江町一丁目区が活動母体。
(*3)伊勢崎市史【自然編】、第Ⅱ章 伊勢崎市の植物、P.273。1984年4月1日発行。編集発行 伊勢崎市。
(*4)発芽と生育のためには下記3条件が必須です。
 ■キンラン、ギンラン自身の種子があること
 ■ブナ科(コナラなど)の樹木が存在すること
 ■これに共生する菌類(菌根菌。イボタケ科など)が発生していること

観察会の様子 2019/5/1

観察会の様子 2019/5/1

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寄り添って咲くキンラン2株。花弁数は8~9。てんとう虫一匹。 2019/5/1

ちょうど見ごろのキンラン。花弁数=7。 2019/5/1

開花が始まったキンラン。花弁数=9。 2019/5/1

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花の数をタップリ付けたキンラン 2019/5/1

4株隣り合って発芽したキンラン 2019/5/1

キンラン全身 2019/5/1

たった一つの花を付けたキンラン。
ひょっとしてキンランではない? 2019/5/1

仲良しキンラン。後ろで枯れているのは昨年の株。 2019/5/1

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キンラン、今が見ごろと花開く 2019/5/1

開花が始まったキンラン 2019/5/1

花の数10個 2019/5/1

ヴェールを外すキンラン 2019/5/1

 2019/5/1

発芽間もない株。恐らくキンラン。

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発芽したばかりのキンラン 2019/5/1

昨年の株の根元から発芽 2019/5/1

2株並んで発芽 2019/5/1

昨年の株の根元から3株発芽  2019/5/1

ギンラン

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 鮮やかなレモンイエローのキンランに比べて、白く小さな花が咲くギンラン。華やかさはキンランに劣るものの、その控え目な風情が健気さを感じ、見つけた時の喜びはキンランに勝ります。


2019/5/1

ギンランの蕾 2019/5/1

花が12個ついたギンラン 2019/5/1

ギンランの蕾 2019/5/1

花をタップリ付けたギンラン2株 2019/5/1

シュンラン

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 今年の観察会では、キンラン、ギンランのほかにシュンランも観察。過年度までの保護管理作業において、園内各所で育っていたシュンランを一ヶ所に移植し、今年はその成果あってか数十株のシュンランを確認。移植した主な理由は、比較的認知度の高いシュンランの盗掘防止のためで、群馬県ではシュンランも絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。


3つの花が咲いたシュンラン 2019/5/1

葉に隠れたように咲くシュンラン 2019/5/1

葉に隠れたように咲くシュンラン 2019/5/1

キランソウ

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 園内で咲いていたキランソウ。Wkipediaによれば、開花期の全草は筋骨草(きんこつそう)という生薬で、高血圧、鎮咳、去淡、解熱、健胃、下痢止めなどに効果があるよう。地面にピッタリと這うように咲いています。

キランソウ 2019/5/1

キンラン、ギンランについて

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 以下、キンランに関するWikipediaの記事引用です。太字と赤色、下線はサイト管理人・丸男が付記。昨年の紹介ページにも掲載した内容ですが、重要事項なので再掲します

【性質に関して】

 キンランの人工栽培はきわめて難しいことが知られているが、その理由の一つにキンランの菌根への依存性の高さが挙げられる。多くのラン科植物の場合、菌根菌は落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌である。ところがキンランが依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成する樹木共生菌である。
<中略>
 外菌根菌の多くは腐生能力を欠き、炭素源を共生相手の樹木から供給されているため、その生存には共生関係を成立させうる特定種の樹木が必要不可欠となる。そのような菌から栄養分を吸収しているキンランは、樹木の作った栄養を、菌を通じて間接的に摂取しながら生きているとも言える。
<中略>
 このような性質から、キンラン属は菌類との共生関係が乱された場合、ただちに枯死することは無いが健全な生長ができなくなり、長期間の生存は難しくなる。自生地からキンランのみを掘って移植した場合、多くの場合は数年以内に枯死する。
<中略>
 現在のところ、一般家庭レベルの技術で共生栽培を成功させる手法は確立されていない

【保全状況】

 元々、日本ではありふれた和ランの一種であったが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に絶滅危惧II類(VU)(環境省レッドリスト)として掲載された。また、各地の都府県のレッドデータブックでも指定されている。
 同属の白花のギンラン(学名:C. erecta)も同じような場所で同時期に開花するが、近年は雑木林の放置による遷移の進行や開発、それに野生ランブームにかかわる乱獲などによってどちらも減少しているので、並んで咲いているのを見る機会も減りつつある。





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